はじめに

狭心症や心筋梗塞を含む虚血性疾患は日本人の死因の第2位であり、毎年中高年を中心に7万人が急性の虚血性疾患で命を落としています。2020年初め、俳優の宍戸錠さんの急逝のニュースが飛び込んできましたが、死因は虚血性疾患であったと言います。

虚血性疾患とは?

虚血性疾患とは心臓に血液が十分に行き渡らない状態を指し、主に高血圧や喫煙習慣が引き金で起こります。長年にわたりタバコを吸い続けたり、高血圧の状態が続いたりすると、血管の弾力性が低下し、動脈硬化が進行します。動脈硬化が進行している血管内では血栓を溶かす機能が低下するため、血流が悪くなり、その結果心臓の筋肉に必要とされる酸素や栄養分が行き渡りにくくなります。急に運動をしたり、強いストレスがかかったりした時に、左腕や背中に痛みや圧迫感を感じることがあります。

虚血性疾患の治療の選択肢としての心臓バイパス手術

虚血性疾患と診断された場合、抗狭心症薬やβ遮断薬、抗血栓薬による薬剤療法がとられます。それでも症状が一向に良くならない場合には、ステントを用いたカテーテル治療か、心臓バイパス手術かの選択を迫られます。手術においては、近年の医療技術の進歩のおかげで3~5日程度の入院で済むケースが増えています。また、人工心肺装置を排除し、心臓の動きを止めずに行う手術法もあり、患者への負担という懸念材料は払拭されつつあります。